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「不動産ビジネス 成功への道」
-第56回-
リスクへの事前対処法
竣工を約3ヶ月後に控えた分譲マンションの建築確認が取り消し。しかも、既に全戸完売。そして、現在の法令では同じ高さのマンションは建築できない。このようなニュースを目にしました。概要は以下のようなものです。
場所は、東京都文京区内。
分譲業者は2003年に土地を取得。2012年に建築確認審査機関から建築確認を受けましたが、近隣住民から東京都の建築審査会に建築確認取消の審査請求がありました。そして、先月、審査会が建築確認を取り消しました。
マンションの工事開始は近隣住民による審査請求後の2013年、販売は2014年7月に開始、今年4月に完売。
(この物件は、2004年以降、近隣住民から各種審査請求がされていました。)
このような状況です。
分譲業者、また、マンション購入者にとって、通常の分譲マンションとは違った事態に遭遇しています。
分譲業者の土地取得から12年も経っています。
分譲価格・建築費等が土地取得時の計画と大きく変わった可能性があります。また、人件費、委託費、借入利息等が、通常の分譲事業より多くなっているでしょう。しかも、既に販売済みですから、場合によっては、マンション購入者に対する補償等の話がありえます。
このような、通常の分譲事業と異なる事態は、リスクです。
この物件は分譲マンションですが、事業リスクという点では、貸ビル経営にもあります。
リスクへの事前対応が重要です。では、事前対応は、どのような手順で行うか。
貸ビル経営の経験豊富な方は、無意識のうちにリスクの事前対応を行っているかもしれませんが、手順を踏んで検討することで、見落とし“リスク”を小さくできます。
手順は、リスクを洗い出し、その発生頻度と影響度を考え、それぞれの対処を決める。
まず、リスクを洗い出す。
何がリスクになるのかを見つけなくては、手の打ちようがありません。洗い出すには、リスクが発生しそうな分野に分けて考えます。
たとえば、ビルが稼働中のことでは、①各種市場関係(賃貸オフィス市場、資金調達市場など)②法令関係(建築関係法令、税法など)③テナント関係(賃料滞納、テナント構成など)④ビルの商品性(陳腐化、地域の変化など)で区分し、リスクを考えます。
次に、洗い出したリスクの発生頻度と影響度を考えます。
たとえば、耐震不足による建物損壊というリスクは、発生頻度は低いとしても影響度は大きいと想定できます。
「想定外」という言葉がありますが、これは、“起きると考えていなかった”ということと、“考えていたより大きい影響だった”という意味があると思います。
そして、リスクに事前に対処する方法としては以下のことがあります。
A.リスクを取り除く。
たとえば、売却。
B.発生確率を小さくする、または、発生時の影響を小さくする。
耐震不足であれば、耐震工事をすることが対処法のひとつです。
C.誰かに負担してもらう。
代表的な例は、保険を掛けること。
D.放っておく。
たとえば、発生頻度が少なく、影響度も小さければ、放っておくという判断があります。
リスクの事前対応手順には、これ以外もあると思いますが、あなたは、リスクの事前対応を行っていますか。