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「不動産ビジネス 成功への道」
-第52回-
建物の安全性とテナントの安心感
マンションを支える基礎杭が、堅い地盤に届いていなかったということで、全国的に大騒ぎになっています。
建物の基礎という、建物存立の大前提で起こった問題です。
しかも、発端となったマンションの売主は、超大手ディベロッパー、工事の元請け会社は旧財閥系、下請け工事会社は大手電機メーカーのグループ会社。そのまた下請けで基礎杭を工事したのは、老舗の総合化学メーカーの100%子会社と、超有名企業のオンパレード。
近年、建築のこと以外でも、大企業で問題発生のニュースが続いています。
今回の問題は、様々な原因があげられており、話題の中心は、マンションですが、オフィスビルでもありうることです。
たとえば、竣工時期の厳守は、オフィスビルにもあります。
分譲マンションの場合、建築が完了する前に販売する青田売りがありますが、オフィスビルでも、賃貸借の予約契約で入居時期を竣工後すぐとしていることがあります。
テナントが現在入居している貸ビルから移転する場合、解約予告期間があるので、退去時期を決めてしまっています。
もし、入居するテナントが退去するビルに、他のテナントの入居が決まっており、竣工時期が遅れると、テナントはどうすればよいのでしょうか。大規模なテナントになるほど、大変な問題になりかねません。
分譲マンションと貸ビルの工事には、似た背景があります。
ここで、今回の基礎の問題へのビルオーナーの対応を考えてみましょう。
貴方がお持ちの貸ビルは、どのような基礎になっているでしょうか。
既に、入居中のテナントに伝えましたか。
もしかすると、全く心配ない地盤で、伝える必要はないとお考えかもしれません。
しかし、全てのテナントが、そのことを知っているとは限りません。“以前”、テナントの責任者に伝えていたとしても、“今の”テナントの責任者は知らないかもしれません。
砂上の楼閣という言葉がありますが、建物の基礎とその地盤がどのようになっているかということは、建物が安定して立つための大前提です。耐震性は、大地震の後にテナントの関心度が高まりましたが、基礎も、建物の安全性に大切なことです。
そして、このような社会的な問題が発生したときに、テナントが感じる不安に前もって対応し、テナントの不安感を解消、または低くすることは、貸ビル業におけるサービスでもあります。
この対応の差が、ビル経営に対するテナントの満足度にも影響します。