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「不動産ビジネス 成功への道」
-第24回-
コストか、必要経費か
東京では、ビルの建て替えが、あちこちで続いています。
先日、あるビルオーナーから、新しいビルの運営委託内容の確認の依頼がありました。
そのオーナーは、ビル経営は外部の会社に委託するのです。
内容をみると、マネジメント費用、つまり、設備点検や清掃などの業務以外の純粋なビル経営の委託費が、どうみても高すぎるのですが、既に合意した後。
それなりに利益が出る見込みなので、合意したらしいのです。
テナント誘致が極めて厳しいことが予想されるなど、納得できる理由があれば適正な対価かもしれませんが、それなりに借り手はいるビルです。
この例に限らず、長年、業務を委託しており、委託業務の内容や委託金額を見直すこともなく、自動的に近い形で契約更新しているケースは多々あります。
業務の内容と委託金額が見合ったものであればOKです。
しかし、その業務、本当に必要なのでしょうか。
たとえば、ビルの管理業務。
貸ビルとしての価値にあまり影響しないし、必ず行わなければならないわけではないものまで委託している業務はありませんか。
これらは、削減すべきコストです。
他方、貸ビル業は、快適なオフィス空間の提供に対してテナントから毎月家賃をいただく商売ですから、そのために必要な支出は必要経費です。
たとえば、エレベーター内部の保護用にカーペットシートを貼っているビルで、汚れたままというものを見かけます。
三つ星オフィスビルの視点からは、このシート自体が、エレベーターを利用するテナントの視点ではなく、好ましくありません。
なぜなら、テナントの快適さよりもビルオーナーの資産であるエレベーターを保護する発想です。
百歩譲っても、清潔感の高い状態としておかなくてはなりません。このための支出は、必要経費です。
また、ビルの印象を高める工事も必要経費です。
たとえば、ビルの顔と言えるエントランス部分で、隣のビルの汚れた壁面が丸見えということがありますが、これでは印象が悪くなります。
新規テナント誘致の時にテナント候補に与える印象は悪くなります。ビルを使っている既存のテナントは、毎日使うので慣れてしまっているかもしれません。しかし、テナントの取引先等でビルを訪問する人が受ける印象は悪くなります。
これを改善し、印象を良くするための支出は必要経費です。
あなたが利用するスーパーなどのお店を考えてください。
近くに2つのスーパーがあり、長年改装もせず古びてしまったお店と、大小の改装を時々行っているお店、どちらで買いたいですか。その商売に対する姿勢は、商品の仕入れなどにも通じるものがあります。
商売に必要な投資は、必要経費です。
あなたのビルでも、ビル価値を維持するために不要なコストはカットし、ビルの価値を維持・高めるための必要経費は確保する見直しをしてはいかがでしょうか。