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「不動産ビジネス 成功への道」
-第22回-
立地にあった経営をする。
先日の新聞で、横浜ランドマークタワーの収益性が下がったので、所有する三菱地所が特別損失460億円を計上するという記事がありました。
一言でいうと、予定していた投資回収ができなくなったということ。
このビルは、1990年に着工し、1993年に竣工しました。
この頃、賃料は高く、将来的にもオフィスビルが足りないという予測の下、元々はオフィス街でない場所にも、多くの賃貸オフィスが新築されました。
建築費は高くなり、結果として、取得費は高くなりました。
その後、バブル崩壊。
当てが外れて、賃貸事業が厳しくなったビルは多くあります。
事業が成り立つと思って、皆が一斉に事業に参入する。
同じようなことは、その後も起きています。
たとえば、仙台。
2000年から2006年までは新築オフィスビルはほとんどなかったのですが、大手仲介会社の資料によると、2008年~2010年の間に21棟のオフィスビルが建ち、2009年の新築ビルの空室率は70%を超えました。
2011年3月の震災以降、空室率は低下しましたが、これがなかったら、どうなっていたのでしょう。
先週、あるビルオーナーから相談を受けました。
東京都心に貸ビルを持っています。
周辺の土地所有者とともに、大きな再開発ビルをつくる計画を大手不動産会社から持ちかけられたので、そのプランを検証してほしいということでした。
“大手だから大丈夫だと思うけど、念のために内容をチェックしてほしい”
ということです。
その大手不動産会社が1年前に作成した事業プランも見せてもらいました。
今回、特に目立ったのが建築費の上昇と賃料の上昇。
賃料の根拠は、大手仲介会社の報告書の数値ということです。
そこで、賃料の報告書をみると、確かに事業プランの坪単価に近い数値があります。
しかし、報告書の坪単価には、前提条件が書かれていました。
要約すると、
“賃借需要は多く、新規供給や大規模物件の募集が非常に少ない現在の状況で、仮に現在、計画建物が存在していたら、十分可能な賃料水準”
ということです。
そこで、相談を受けた土地の立地を考えると、駅から5分以上かかります。しかも、駅からその土地までの間は、良好なオフィス街とはいえません。
また、駅周辺で比較的大きなオフィスビルの新築が複数計画されています。
それらのことを、ビルオーナーの方に伝えました。
ビルオーナーは、
“現プランの想定賃料は難しいでしょうね”
つまり、自社の貸ビルよりも良い立地に、似たようなオフィスビルが相次いで建築され、貸し手優位の現在の市況が変われば、立地が悪いビルの賃料は下がります。
不動産は、その名のとおり、動かせません。
長い目で見た立地条件に合ったビルを経営する。
これが基本です。