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「不動産ビジネス 成功への道」
-第71回-
日銀が警鐘。貸家業の事業収支に。
日本銀行が、3月24日に、アンケート調査にもとづく「地域金融機関の貸家業向け貸出と与信管理の課題」というレポートを公表しました。
その中で、収支シミュレーションは、事業性を判断する有用な手段で、その妥当性を確保することが重要だとしています。
しかし、実際には、例えば、賃料収入や大規模修繕、サブリース契約の内容で、検討が不十分のものがあると指摘しています。
そして、金融機関は、貸出の実情に応じた対応を講じていく必要があり、日本銀行は、各地域金融機関の取り組みの状況を踏まえ、必要な改善を促すとしています。
これは、私が思うに、資産運用や節税等を主な目的として、多くの賃貸アパート等の貸家の建築が行われているが、その事業性の検討が甘いものが相当数あるということです。
このレポートは金融機関について指摘していますが、建築主に対する警鐘とも言えます。
貸家業、つまり、不動産事業の事業分析が甘いまま、不動産オーナーになってしまっていることでもあります。
アパート等の建築を提案する業者の収支プランを、鵜呑みにしている人がいることの現れでもあるでしょう。
業者が大手だから、有名な会社だからといって、あなたの担当となった方が、不動産の事業性分析に詳しいとは限りません。
私が、これまでコンサルティング依頼を受けた中にも、似たようなケースがあります。大手不動産会社との東京都心のターミナル駅に近い複数の土地所有者による賃貸オフィスを中心とする再開発事業でした。しかし、事業性分析が甘い、また、大手不動産会社に有利な事業の仕組みでした。
特に、事業の仕組みは、その会社が通常採用している方法だというのです。
私は、クライアントに、その仕組みの不公平な部分、事業性の見通しを指摘し、その内容を理解してもらいました。
投資に絶対はなく、将来の確実な予測は、誰もできません。
しかし、納得性を高める予測というものはあります。
それは、他の商売でも同じでしょう。
今回の日本銀行のレポートは、貸家業、ひろくいえば、不動産賃貸業を事業、つまり、ビジネスとして考えて取り組まないといけませんという警鐘だと考えます。