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「不動産ビジネス 成功への道」
-第19回-
事業計画は役に立つのか?
街を歩いていると、卒業式に出るのだなと思われる人を見かける季節となりました。
数年間を伴に過ごしてきた友人・先生との多くの思い出を胸に、それぞれが別々の道を歩む寂しさとともに、新しい出会いを楽しみにしていることでしょう。
多くの会社でも、新年度に向け、異動や転勤で、別れと出会いがあります。
そして、新しい事業年度を新しい人たちと働くことになります。
事業で大切なのは、これからのこと。あなたは、来年度以降の事業計画を立てていますか。
この事業計画、私も、会社員時代(今でも、ある意味、会社員ですが)、事業計画で頭を悩ませたことは度々ありました。
特に、新規事業担当の課長時代は、見通しがない中で、計画を立てなくてはなりませんでした。
「状況は変化するので、わかるわけがない」
「作っても、計画通りになることはない」
と思っていたときもあります。
しかし、ある人の言葉で意識が切り替わりました。
「目標通りにいかないからこそ、役に立つ」
これは、事業を進める途中で目標と実績の差がわかることで、差が生じた原因を考え、手を打つことができるようになるという意味です。
つまり、目標(計画)があるからこそ、軌道がずれていることに気付く。なにもなければ、どこに向かっているかもわからないということです。
これは、貸ビル経営にも当てはまります。
10年ほど前に、Yビルの経営状況の分析と今後の対策立案の依頼を受けました。
築5年程度で、過去の収支は良い状態でした。
ところが、そのビルが立地する地域の状況、ビル自体の立地、ビル規模・性能などを踏まえると、今後10年間は賃料が下げり続ける可能性が高いと判断し、さらに、ビル経営の原価を調べ、数パターンを試算しました。その結果、厳しい見立てのケースでは、10年後頃から赤字が続くことが予測されました。
ビル経営では、固定的な費用が多いので、この部分は予測しやすいはずです。
そのため、事業計画で重要なことは、収入をいかに確保するか、また、貸ビルも商品ですので、商品価値を維持・高めるための投資です。これらについても、一般の商売と比べると、ビル経営での予測はしやすいです。
話は戻りますが、Yビルの対策のひとつに、“収支状況が良い状態で売却する”ということがありました。
この話には、後日談があります。
2年ほど前、このビルを所有する企業から、相談を受けました。
数フロアの空室がある状態が続いており、対策を考えてほしいというものでした。
受け取った資料で、過去の収支状況を見ると、以前予想した赤字パターンに近い状態で推移していました。
ところが、途中で手を打っていなかったのです。
相談に来た方は、8年ほど前に私が提出した分析結果と対策案自体、ご存じありませんでした。
数年ごとに担当者が変わる企業では起こり得ることですが、一時的にビル市況が良かった時期もあったので、先送りしているうちに、対策報告書は忘れられ、事業計画の見直しもされなかったのでしょう。
あなたのビルには、事業計画がありますか?そして、定期的に見直しをしていますか?