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「不動産ビジネス 成功への道」
-第2回-
判断は、ビル経営全体を踏まえたうえで。
三つ星オフィスビル構築コンサルタントの釜口です。
賃貸オフィスビルには、幅広い分野の業務があります。
運営面では、テナントとの対応、空室が発生したら新規テナント募集、日々の清掃や警備、定期的な設備点検などがあります。
また、ハード面では、建築設計・設備設計・工事などがあり、各分野はさらに細分化された専門があります。
そして、賃貸借契約などの法令や収支面、税務面のことも必要になります。
ビルの大小にかかわらず、賃貸オフィスビルは様々な専門家の協力を得て、運営されています。
たとえば、次のようなケースがあります。
建物が古くなり、空室がなかなか埋まらない。
なにか対策を打とうと思い、空調機も古くなっているからということで、空調設備の専門家に相談し、全館、最新の空調設備に替えました。
ところが、空室は埋まらないまま・・・・・
なぜ、このようなことになったのでしょうか?
テナントからの苦情の中でも、空調に関することは最も多い部類に入ります。
そのため、空調設備を最新のものにしたことは、ひとつの対策ではあります。
しかし、このケースの対策には少なくとも2つの誤りがあります。
一つ目は、最新のものにしたからといって、空調に対する苦情がなくなるとは限らないこと。
二つ目は、空室を埋めるための対策としては、他にもっと効果的な対策があったかもしれないこと。
このケースでは、このビルオーナーは空室を埋める対策として空調設備を替えたのですから、空室が埋まらなければ、こちらの誤りの方が重大です。
このようなことになったのは、空調機が古くなり、空調の苦情も多いからといことで、“最新型にすれば空室が埋まるかな”という発想だったことです。
しかも、相談したのは空調設備の専門家。空調の専門家は空調については詳しいでしょうけれど、賃貸オフィス市場について詳しいとは限りません。
目の前で起こった問題には、対処しなくてはなりません。
しかし、選んだ対策が、ビル経営として考えたときに、ベストな対処法であるか。これは別問題です。
このビルオーナーの場合、“新規のテナントには、何が最もアピールするのか?”この視点から対策を打たなくてはならなかったのです。
他のことでも同じです。ビル経営を行ううえで、多くの分野の専門家の力が必要になります。
そのとき、ビルオーナーは、どの専門家の協力を得るのがベストであるか、それをビル経営という全体の中で判断しなくてはなりません。
コラム「Road to THE三つ星オフィスビル」、引き続き、ご利用ください。