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「不動産ビジネス 成功への道」
-第73回-
賃料改定も、段取りが9割
先日、あるビルオーナー(個人オーナーでなく、法人オーナー)から、オフィスの賃料改定についての相談がありました。
「賃貸市況が良くない時に入居したテナントで、同じビルの中でも賃料が格別安く、現在の新規賃料水準からは約24%程度低いのです。そのため、値上げ交渉を始めたけど、値上げに応じられないと言われている。」ということです。
どのような段取りで進めたか、具体的に聞いてみたら、おおよそ次のようなものでした。
契約改定の3か月ほど前に、管理会社からテナントに、賃料改定についての意向があることを伝えた。その時は、具体的な金額の話は出していません。
その1か月後(契約更改の2か月前)、賃料改定の通知書を提出。値上げ幅は約20%(値上げ後の賃料は、現在の新規水準より9%程度低い)。
その後、テナントからは、賃料値上げに応じられないとの連絡があったということです。
ここまで聞いただけでも、賃料改定交渉の段取りが悪いと思うのですが、入居からこれまでの賃料の状況を確認しました。
すると、入居の時から既に、当時の賃料水準と比べても安い賃料だったのです。ビルオーナーの現在の担当者に当時のことを知る人がいないことなどで、はっきりとはわからなかったのですが、当時の交渉経緯の書類などから考えると、“空室を早く埋めたい”ということだったと思われました。
今回、テナントから“賃料値上げに応じられない”という連絡があったとき、“入ってあげたのだ”ということも言われたそうです。
実は、管理会社の担当者は、入居時の経緯を知っていたのですが、ビルオーナーの現在の担当者に明確に伝わらず、ビルオーナーと管理会社で意識が合っていなかったこともわかりました。
この当事者の意識合わせも、改定交渉の段取りの一部です。
これらのことが合わさって、テナントの心象を害したので、相談を受けた時は、マイナス状態からのスタートです。ここから、挽回を図ることになりました。
その後、対策を考え、どうにか、交渉のテーブルに着くところまでになりました。
賃料改定は、次回の改定以降の売上にも影響が続く、価格交渉です。
まずは、段取りを念入りに考えることが大切です。